合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~
(こんな服で良かったのかな……)
ごくごく普段着なことをちょっぴり不安に思いつつ。
目標の住所に着くと、そこは大きな高級マンションだった。
(マンションの一室が会社になってるんだね、きっと。)
ドキドキしながら、あたしはオートロックのインターフォンを押した。
601、と。
「あいよ」
昨日の電話と同じ、だるそうな声がインターフォン越しに聞こえてきた。
「藤川です」
ういーん。
返事がないままに、自動ドアが開いた。
601のドアの前にたどり着くと、もう1回インターフォンを押す。
ガチャ。
重そうなドアがゆっくりと開いて、めんどくさそうに顔を出したのは。