合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~
鬼太郎(勝手に命名)は、ソファにどさっと落ちるように座ると、FAXされたあたしの履歴書をどこからか取り出した。
「ええと……藤川涼音っていうのか、珍しい名だな」
ぶつぶつ言うと、いきなり頭をぶんぶん振った。
「……ダメだ、目覚まそ」
鬼太郎はゆらゆらと横のドアに消えた。
気楽そうな職場?だけど。
……このバイト、大丈夫なのかな?
あたしは不安と安心のないまぜな気持ちで、ただちょこんと所在なく腰掛けて待ってた。
カチャカチャ音がして、やがてコーヒーのよい香りが漂ってきた。
……かと思うと、鬼太郎がよろよろと戻ってきた。