合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~
靴にあわただしく足を入れて、勢いよくドアを開けると。
「わっ」
目の前には塔也の驚いた顔があった。
手にはお菓子のたくさん入ったレジ袋。
「あ、もう時間か」
「あ、はい」
(ああ、この人はまともだ)
酔ってる気配のない塔也の顔を見て、ちょっとほっとする。
背後から、下品野郎の歌うような声がした。
「さびしい男子校男子にどうか憐れみを~♪」
「何だあいつ、酔っ払ってんのか」
塔也があたしの肩越しにリビングに視線を投げて、あきれたように言う。
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