合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~
暗闇で何かがピカピカ光ってた。
携帯だ。
着信あり――ママから。
うげ。
(今何時?)
夜の8時。
よかった。全然非常識な時間じゃない。
それにしても、あたし、寝過ぎ。
慌ててかけ直す。
「ママ?電話もらった?」
「うん。どうしたの、遅いじゃない」
「うん、ごめん。あのね」
あたしは息を吸い込んだ。
「バイト先の人が風邪で倒れてて……誰もそばについてあげられる人がいなくて……今一緒にいるんだ。今晩帰れないかも」
「……」
電話の向こうのママは無言になった。
(うわ、怒ってる……)