合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~


「ちゃんとママにも紹介してよ」

「だからぁぁ~!!」

「避妊だけはきっちりしなさいよ!」

「ちょちょちょちょっちょっとママ!ホントそんなんじゃないって!」

「あはは、じゃあね、パパは適当にごまかしとくから」


笑ってママは電話を切った。


(違うっつうに!)


ママ、思い込みが激しすぎるよ!


こっちの話をちょっとは聞いてよね。




携帯を見つめてに呆然とするあたしに、後ろから声が掛けられた。


「何、親御さん?」


弱々しいながら、どこかバカにしたような声。


振り返ると、やっぱり片方の口角を上げてニヤッと笑ってた。

上体を少し起こして、ソファに頬杖ついて。

乱れかかった髪を片手で面倒そうにかきあげてる。

なんか無駄に美しいんですけど。


「……うん」




この小説の表紙へ
HOME