(――そう。
あの人だけが悪いんじゃない)
あの人がああいう人だって、わかってたはずだもの。
わかってて来たんだもん。
からかわれようが、弄ばれようが、
それでも良かった。
あたしは最初から、この人に負けたがってたんだ。
――これは、あたしの望んだこと。
あたし、あの人のことが――
ガラッとドアを開ける。
「センパイ……あのっ」
言葉が出てこなかった。
凌はさっきと同じ姿勢のままで、ゆっくりと目を上げた。
眉をすぅっと上げて、鋭い目であたしをじっと見つめる。
「………」
あたしの表情に何かを読み取ったのか。
しばらくして、皮肉な口元がニヤリと歪んだ。
「……毬香は別パターンの方がいいのか?」
立ち上がってあたしの方にゆっくり歩いてくると。
腰にそっと手を回される。