月と花束


小さな階段を長い足でトントンと上がって、花束をそっと横に置く。


手を合わせて拝む尊さんの背中を見ていると、また目から涙があふれて頬に流れた。



涙って本当に枯れないね。

いくら流しても、尽きることがない。



この悲しみが、いつか癒えることなんて、あるのかな。

想像もつかないよ。



「ありがとう」


あたしの涙声に振り向いた尊さんは、ハンカチで目元を必死で拭いているあたしを見ても、何も言わなかった。




「……魁人ね、尊さんのことがすごく好きだったんだよ」


涙をごまかすかのように、あたしは話してた。


「……」

「きっと尊さんに甘えてたんだね。

しょっちゅうおうちにお邪魔したりして、ごめんね。

ありがとう」


「……」


尊さんは、”わかってる”とでも言うように、ちょっぴり微笑んだ。



この小説の表紙へ
HOME