クロッシング


(カモれそうな女だな)


高そうな服に身を包んだちょっときれいな女。

駅の構内の鏡やガラスで自分の姿をいちいち確認してる。

駅から出てくるところで、こっちをじっと見るのが見えた。


30を超えたぐらいだろうか。

ブランドのバッグ、靴。ブランドの紙袋。

きっちりとセットして豪華なヘアアクセで飾った髪。


――虚栄心の固まりのような女だ。


いかにも周りの男をスペックで測っていそうな、薄っぺらい女。


女に直接目は向けずに、視界の隅に映った姿を見て値踏みする。

いかにも駆け引きなんかが好きそうだ。


(早々に軽く300は落としてくれそうだな)


ちらちらと向けられる女の視線には知らんぷりをして、ケータイを耳に当てる。


「……ああ、オレ。何?

……なんだよ、それ。……わかったよ。

んじゃ、近くの喫茶店ででも時間つぶすわ」


ウソの電話。



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