クロッシング


ぶらぶらと近くの喫茶店に向かう。


きっと、なんでもないふりをして店に入ってくるはずだ、この女。



ちょろいちょろい。





少し離れたところに座っていても、女の意識がこっちを向いている。

興味がないフリをしてるけど。



くるくると忙しそうに働いているウェイトレスの女の子が目に入った。

ここには何度か入ったことがあるけど、その度にいつもいる子。


――高校生かな。

お客一人ひとりに明るい笑顔を惜しみなく振りまいて。

こんな時給の安いところでも疑問を持たず、一生懸命働いてる。


まともな世界の、まともな子。

一生、人生の暗い部分は知らずに終わる。そんな顔してる。


――こういう子はカモには向かない。

オレみたいな男には、世界が違うから怖がって近づかないし。

ろくに金も持ってないしな、どうせ。



(ちょっと揺さぶるか)


あのカモ女のプライドを。

この子でも使って。



この小説の表紙へ
HOME