クロッシング


「今日はヒマそうだね」


カウンターのスツールをまたいで腰掛けた。

慌てたようにちょこまかとカウンターを回って中に入り、お水を丁寧に差し出す。


「ホットちょうだい」

「はい、ホットですね」


カウンターの奥のマスターが答えた。


「ねえ、メイちゃんて高校生?」

「あ、はい」

「学校が終わってから毎日こんな遅くまでバイトしてるの?」

「……ちょっとおうちの事情があって……

……お母さんが仕事探してるところで……今月ピンチなの……」


恥ずかしそうに言葉を濁す。


――母子家庭か?


(ちょっと突けば簡単に転げ落ちるパターンだな)


(やめとくか。

何も苦労してる金のない子から搾り取ることもない。

いくらでもカモはいる)


相反する思い。



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