クロッシング


(行ってみるか。ヒマだし)


念のため顔を確かめようと窓を覗きこんだ。


(――?)


やっぱりあの子だ。

客がいない無人の店で、いつもの明るいスマイルがなりをひそめていた。

テーブルを拭く手に落としている目は寂しげで、どこかうつろだった。


(若いのに、人生に疲れたみたいな顔してるな)


意外に苦労してるのかもしれない。


よく見れば、服も大型量販店の質素な安物だった。

無造作に伸びた黒髪ストレートヘア。

いかにも安物の履きつぶした靴。


――これだけバイトに入ってて、女子高生が一体何に金を使ってるんだろう。



店のドアが開く音に、はじかれたように振り向く。


「いらっしゃいま……あ……」


見開いた大きな目がうっとりとこっちを見た。

と同時に、電話しなかったことを思い出したのか、バツの悪そうな表情になる。



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