初 恋


「あの……さ、明日も一緒に帰らない?」


未怜ちゃんは、少しうつむいたまま、ほんのり頬を染めたように見えた。


(うぬぼれかな?――ぼくの)




時間が合うときにはちょくちょく一緒に帰るようになって。

ぼくは、最初ほとんどしゃべらなかった未怜ちゃんが、少しずついろんなことをぼくに話すようになってくれるのが、とてもうれしかった。



(かわいいな)


ぼくの心にいつの間にか未怜ちゃんががっちり居座るまでに、そう時間はかからなかった。



中学校は、小学校の隣の敷地にある。


中学校に上がったとき、当然未怜ちゃんも同じ中学校にいるもんだと思ってた。


どのクラスにも未怜ちゃんの名前がないと知ったときのぼくのショックときたら、それはそれは大変なもんだった。



(未怜ちゃん……どこへ行ったの?)



不思議なことに、未怜ちゃんがどこへ行ってしまったのか、知ってる人は誰もいなかった。

まさに煙のようにかき消えてしまった……







そんな未怜ちゃんとぼくがふたたび会うのは、4年後のことになる――。





【初恋  完】


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