合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~


それにしても、どうしようかな。


腕を抱き枕のごとくがっしり抱えられて、困って首だけきょろきょろしていたら。



ふと見ると、塔也はすやすやとお眠りあそばしてた。

さっきの苦しそうな表情とはうって変わって、穏やかな表情。


(あ、寝てる)


通った鼻筋に、長い前髪が乱れてかかっていて。

引き締まった頬は、思いのほか肌がきれいだった。


(てか、近いよ……)


腕を抱えられてるから、塔也の顔が至近距離にある。

下手したら息かかりそうな距離。


(腕抜いたら、目、覚めちゃうかな)


もうちょっとこのままにしていよう。


あたしも、ソファの横に座ったまま、頭をソファの座面にごろんともたせかけた。




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