合鍵 ～あたしの不愉快な夏休み～
「別に」
”あんたには関心ないよ”てな顔つきであたしは言ってやった。
塔也はしばらく怪訝そうに前髪の隙間からあたしを見てたけど、また作業を再開してた。
お茶を淹れに行くときにこっそり覗いたら、どうやら会社の会計簿をつけてたらしく。
ファイルには領収書がたくさんきれいに貼ってあり、
ノートパソコンの画面には弥生会計って文字が見えた。
（そんなことまでやってるんだ）
本読んでるんじゃないから、きっと不機嫌ではない、と思う。
あたしは塔也の背中に話しかけた。
「会社の帳簿か何か？」
「……ああ、うん」
塔也も振り向かずに答える。
「うちの会社、８月が決算だからさ……」
（決算？）
よくわかんないけど、多分今月が忙しいのかな。