合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~


「ご両親が会社やってるの?」

「ああ、うん」


どこかうわの空で答える塔也。


「帳簿作成と税務申告はオレの担当。

法人の税務申告は何かと面倒でさ、あの人らじゃ絶対ムリ」


あの人らって……。

この人のご両親ってどんな人たちなのかな。


「……うん、今年はちょい黒くらいだ」


小難しい顔をしてノートパソコンを眺めていた塔也の顔が、突然ニッと崩れた。


「……?」

「それがね、税金が一番少なくて済むバランス。

――まぁ、税金くらい気持ち良く払えよ、とは思うけどな」


満足そうにファイルを閉じると、ファイルを持ってすたすたと2階へ上がる。



次は、また別の資料を持ってきて、ノートパソコンで何やらやり始めた。


「今度は何?」

「ああ……企画書の……骨組みだけでも……」


それだけ言って、言葉が途切れた。


熱中してるんだ。




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