呪い殺して -ウォーターカラーズ 番外編-


「あ、もちろん。どうぞ」


明るくにっこり笑って、頷いてくれた。


 * * * 


「ねぇ、君なんでしょ?」


隣で寝そべっていた智弘さんが突然言った。

横を見ると、整った顔にどこかからかうような微笑を浮かべている。


最初に会ったときは、てっきり役者だと思ってた。

すらりとして姿勢の良い、美しい立ち姿。目立つ端正な容姿。

役者かモデルかどちらかな。そんな風に思ってた。


だから、さらさらとその場で似顔絵を描かれたときは驚いたっけ。

短い時間で、驚くほど特徴をつかんだ肖像画。

山中さんに「黒川くんはいいなあ、女優さんの似顔絵をささっと書けばみんなコロッと参る」なんてからかわれていたけれど。


黙々と仕事に打ち込む、あの真剣でストイックな黒い瞳に、気づけばわたしはすっかり惹かれて虜になってしまっていた。



「君なんでしょって、何が?」

「Smokey Bubblesの人に薫の絵見せたの」




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