小さな芽


「何やってんの?」


ウッドデッキにしゃがみこんでごそごそと作業中のあたしに、背後から声がかけられた。


「……」


何となく無視してしまう。


「……何やってんの?」


あたしが返事をしないのを、大して気にしていないような声。


あたしはやっと振り返ると。

窓枠に背をもたせかけて腕を組んで、形のよい眉を少し上げた、興味なさげな黒い瞳を見上げた。


手元の植木鉢を指差す。


「これ植えてるの」

「何?それ」

「”セダム”とかいう多肉植物なんだって」

「……ふぅん」


気のない生返事。


「友達んちで、伸びすぎたからって切って捨ててるところをもらってきたの。

植えとくと、育つんだって」

「……そんな、葉っぱの切りクズみたいなものが、ちゃんと育つの?」

「……育つとは言われたけど、わかんない。

土に触れると根っこが出るって」


それだけ言って、また作業に戻る。

作業といっても、土を入れた植木鉢に、指先にちょこんと乗るほどの小さな小さな芽をバランスよく並べてるだけだけど。



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