その電話は、何の前触れもなく突然かかってきた。
「あ、毬香(マリカ)? オレ」
聞き覚えのある低い声。
――誰?
まさか……
「オレだよ。都倉凌」
「――都倉センパイ!?」
(うそ、都倉センパイが? あたしに電話を??)
びっくりして一瞬ケータイを落としそうになる。
都倉センパイは、あたしの陸上部の先輩だった。
過去形なのは、もう卒業して今はもう大学生だから。
ろくに練習しないくせに、大会ではあっさり優勝。
いつも人をバカにしたような笑いを浮かべたイヤミな男。
隠れた悪い噂に事欠かない。
極めつけは、超イケメン。腹が立つほどの美形。