避けつつもついつい姿を目で追ってしまう。
……そんな人。
都倉センパイとは部活上の付き合い程度で、そもそもほとんど話したことすらない。
ていうのも、あたしはごくごくフツーの人間だし。
都倉センパイのような人とは、部活でも一緒じゃないと接点がそもそもない。
(あたしの名前、よく覚えてたな……)
まずはそのことにびっくりした。
……人の名前なんて、覚えてそうにない人だもん。
しかも……ケータイの番号なんて、教えたことあったっけ?
「おい、聞いてんのか?
……あのな、今度イベントあんだけど、来いよ」
ケータイの向こうの笑い混じりの声で、あたしは我に返った。
「あの……イベントって、何ですか?」
「学祭でさ、ゲーム企画があるんだけど、オレ出演者役にされちゃったんだよね。
女の子連れてかなきゃいけなくってさ。
オレ今彼女いねぇし、毬香が来てくれないかと思って」