(またゲーム?)
もうこの人にもてあそばれるのはおしまい。
ゲームオーバーのサインはもう出てる。
からかうのはもうやめて。
あたしは首から上だけ半分振り向いて、凌のうすく笑った整った口元を見た。
「……センパイ。
人の気持ちをもてあそぶのもいいかげんにしてくださいね。
あたし、帰ります」
あたしはきっぱりそれだけ言うと、ドアに手を掛けた。
もう凌は何も言わなかった。
ドアを開けて外に出て、わざと丁寧に閉める。
閉まるドアの隙間から、凌のうつむいた顔が一瞬視界に入った。
いつも余裕の笑みを浮かべてる、あの憎らしい、整った美しい顔。
自嘲するように皮肉げに歪んだ口元が、どこか投げやりに見えた。
目元を隠すように垂れる茶色い前髪。