(きっとあの人、素直じゃないんだ。
自分を表現するのが下手なだけ。
ひねくれていて、変化球しか投げられないんだ。
だから、シナリオ、なんて言ってごまかしてる)
そう。
わたし、先輩に憧れてた。
多分、ものすごく好きだった。
でも、近づいたら火傷しそうだから、ほんのり遠目に見るだけで満足してた。
自分の気持ちを正面から見ずに来た。
(ちょっと――
信じちゃダメ、毬香!
あの人を信じてこんな目に遭ったでしょ。
――またあんな気分を味わいたい?)
(あたしをあんな見せ物にしたのは誰?
あんな姿を大勢の人前にさらさせたのは誰!?)
理性が声高に訴える。
……そうだよね。
近づいて、あたしは火傷した。
それだけ。
多分、子どもが危ないものを触りたがるような。
そんな一種の冒険心。