4月に入部したとき、あたしは同じテニス部の颯太の猛アタックを受けた。
そのことも、その後付き合いだしたことも、テニス部内ではよく知られてることだったりする。
「何があった?」
「……」
「立ち話も何だな、そこ座れよ」
部室はプレハブだから、出たらちょうどグラウンドの周りの木陰。
蓮センパイは、すたすたと歩いて木陰の地べたに座った。
あたしも横に座る。
残暑の厳しい季節なのに、木陰は意外に涼しかった。
「……で、どうしたの?」
「……」
まだ意固地に黙ってるあたしに、蓮センパイのゆったりした声が畳みかける。
「ケンカでもした?」
あたしはだまって首を振った。
「浮気でもされた?」
あたしはまたしても首を振る。