「……え、じゃ、何だろ」
蓮センパイは頭をぽりぽり掻いた。
「まさか、別れたとか?」
「……」
あたしは力なく首を振った。
「わかんね。降参」
蓮センパイはおどけて両手を挙げて降参のポーズ。
「……どうしたの?」
あたしは唇を噛んだ。
「……さっき、男テニの部室で……」
「うん」
「颯太が誰かと話してるのを聞いちゃったんです」
「何を話してたの?」
「……あたしの陰口」
「杏奈の陰口?」
あたしはこくりとうなずいた。
悔しさがよみがえる。
「陰口って、どんな?」
蓮センパイは、まったりとした口調でどんどんあたしを追い込んでくる。
「……あの……」
「なに?」