月と花束


頭ではわかってる。


――でも、たった1年なんて、短すぎるよ。



もっともっと、一緒にいられると思ってた。

もっともっと、同じ時を過ごしていたかった。

声を聞いていたかった。

笑顔を見ていたかった。



まだまだ、話したいことはたくさんあったのに。




白い月を見上げながら、あたしの頬にはまたとめどない涙が伝ってた。






ざく、ざく、ざく。


背後で砂利を踏みしめる足音がした。


規則正しい、力強い足音。


まるで生命をきざむ心臓の音のように。




どうしてかな。


振り返らなくても、あたしにはこれが誰だかわかる。



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