クロッシング


「ご注文はお決まりですかぁ?」


明るい笑顔で水をテーブルに置くウェイトレスの子の手首を素早く握った。

細い手首。


「きゃっ」


驚いて大きく見開かれた茶色い瞳がこっちを見返してた。

素直な、まっすぐこっちを見る目。


「キミを注文しちゃダメ?」

「……」


返答に困って、何とかつかまれた手を抜こうとする。


「……だダメです!」


まともに返答するのが、なんだかおかしかった。

女の視線を感じながら、両手で小さな手を包み込む。


「うそ、冗談。かわいいなって思って。

ホットちょうだい」

「ホットですね」


少しふっくらした頬を赤らめながら、ほっとしたように手を抜くと、慌ててちょこまかと走っていく。



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