クロッシング


「メイちゃん、ここのホットLふたつ、◯◯先生のところに持って行って」

「あ、はぁーい」

「もうお代もらってるから」

「わかりましたぁ」


トレイを持って、器用に半身でドアをすり抜けて、すたすたと早足で歩いていくのが窓越しに見えた。


めい、というのか。

屈託がなくて、みんなに愛されて大事にされてる。そんな子。


同じ高校にも、あんな感じの子がいたな。

――あの事件以来、避けられるようになってしまったけど。


(オレもこうだったかもしれない、そんな人生)


ふと、余計なことが頭をかすめる。


(……んなワケないな。オレに、まともな人生なんて)


思わず自分を鼻で笑う。


(オレがあの子くらいの歳は、何してたっけな)



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