クロッシング


「わぁ、すごい、きれい!トンネルになってたんだ」


商店街にアーチ状にかかった光のトンネルが、ずっと向こうまで続いてた。

色とりどりの幾何学模様が幾重にも重なって、ぼーっとしているとトランス状態に陥りそうな空間。


「魁人さんって大学生さんなの?」

「……うん。D大の3年」

「そっかー。いいなー。あたしは大学、行けないから」


他愛ない会話をしながら、たくさんの見物客に混じって、光の道をふたりでゆっくりと歩く。


(何がしたいんだオレは)


金にならないなら時間の無駄。


(それとも、失われた高校時代でも取り戻すつもりか?)


思わず苦笑する。


(――ま、いいや。

ノルマに達しない時用にキープしておくか、この子は)



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