初 恋
「教科書をそれ以上汚すなら弁償しなさいよ」
未怜ちゃんの声は、ほんのわずかに震えてた。
「何だと、この……」
佐野は怒りのあまり立ち上がる。
佐野の大きい図体の前に、未怜ちゃんはまるで子ウサギだ。
いじめられてた子は、この時とばかりに慌てて教科書やノートをかき集めて、ガサガサとランドセルに突っ込んだ。
未怜ちゃんはちらっとそれに目をやって、かすかにうなずいた。
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