初 恋


しかし、未怜ちゃんは、大きな黒い目でじっと佐野を見つめると、ピンと立てた人差し指で佐野をまっすぐ指して言った。


「お兄ちゃんをあてにするなんて、佐野はよっぽど弱いんだね」


「……」


一瞬虚を突かれたように目を丸くした佐野は、ぎらぎら光る怒りの目で未怜ちゃんをにらんだ。


しかし、言葉は出なかった。



「お兄ちゃんお兄ちゃんって、お兄ちゃんがゾクだったら何だっていうのよ。

お兄ちゃんの権威をふりかざさないで、自分自身の実力で戦ったらどう?」


(うわ、この子言うなぁ……)


こんな子だったのか。

知らなかった。


ぼくはひどく面食らってた。



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