初 恋


多分、何も言い返せなかったんだ。




教室内を、凍り付くような沈黙が支配したとき。


キーン コーン カーン コーン

始業のチャイムが鳴った。

まさに救いの鐘の音。


張りつめた緊張の糸がふっと緩んで、みんなほっとして席に着く。



(未怜ちゃん……)


ナナメ前の席の未怜ちゃんをこっそり見ると。

きゅっと握られた手が小さくぶるぶる震えてた。



(未怜ちゃん……怖かったんだ)


その瞬間、何だかぼくの胸もキュッとなった。



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