初 恋


そりゃそうだよな。


あいつに単身挑みかかるなんて。

下手したらボコボコに殴られてるとこだ。



未怜ちゃんに加勢できなかった自分が、ひどく恥ずかしく思えた。






次の休み時間。


ひそかに心配していた、未怜ちゃんへのいじめは、全く起こらなかった。


教室全体に、「あの連中に未怜ちゃんはいじめさせない」という雰囲気があったと思う。

あいつらは、それを感じ取ったのかもしれない。


それどころか、あの連中は、何をするでもなく、教室の隅に集まってごそごそはしていたけど、誰もいじめはしなかった。



(未怜ちゃんが、変えたんだ)


あの連中の好きにはさせない――


その未怜ちゃんの強い決意と勇気ある行動が、クラスの他の傍観してた子たちをすら動かした。

誰もが恐れ黙認していたあいつらのいじめを、誰も放っておかなくなったのだ。


いくら佐野が強くても、所詮1人だ。

クラスが一丸となれば、とてもじゃないけど勝ち目はない。



佐野についていた奴らも少しずつ離れていき、そのうち佐野は孤立するようになった。



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