合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~
うっとうしい前髪の間から眉をひそめた顔が見えた。
(確かに、言われてみれば賢そうな顔してるかも……)
なんて思ったりして。
白い錠剤を塔也の形のよい唇に放り込んだ。
コップを差し出すと、塔也の手があたしの手の上からコップを掴んだ。
(わっ………)
氷のように冷たい手。
……手足が冷えてちゃ、眠れないよね。
あたしは何だか哀れになって、思わず塔也の冷たい手を両手に挟んだ。
「あったか……」
声にならないような塔也の声。
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