合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~


「財布?」

「うん」


あたしが黙って財布を渡すと、塔也は中から1万円札を抜き出して、ソファに置いた。


「これでなんか食え」

「……」


1万円も要らないってば。

そう思いながらも、気遣いが嬉しかった。


「……釣りは返せよ」


あ、そうですか(汗



「あと、薬代もそこから取っといて」


あ、ちゃんとわかってくれてたんだ。

まったく気が利かないくせにさ。



塔也は不意に照れたように微笑んだ。


「悪かったな。あんたがいてくれて助かった」

「……」




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