合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~


心の中に沸いていたいろんな悪態が、霧のようにしゅぅんと消えた。


……こんな笑顔、ズルいよ。



それにしても、いつもよりずいぶん……


「いつも不機嫌で無口でぶっきらぼうでそっけないのに、今日はずいぶん口数が多いね」


普通にしゃべってる塔也の声は、低めでよく通る、気持ちのいい声。

ちょっと発見。


「え? そう?」


きりりとした眉がすっと上がった。


「オレ普通だけどな……それにしてもずいぶんな言われようだな」


ずいぶんって、自覚ないのかアンタは。


「……オレ朝ダメなんだよね」


……何それ。

あれを、ダメなんだよね、の一言で済ますなッ




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