合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~


ガチャ。

ドアが開いて出てきたのは、ニヤニヤ笑いを頬に浮かべた塔也だった。


――何よ、その顔。


細い長身を壁にもたせかけて、腕組んでニヤニヤしてる。


「何チャイム鳴らしてんだよ、合鍵持ってるだろ」

「え?」


あたしはぽかんとする。


(覚えてたの? 合鍵のこと)


「じゃあ、何で……」


覚えてたんなら、何で返せって言わないのよ。


「これ、返しに来たから……」


鍵を差し出すあたしを、流し目でにらむ。


「ったく、なんで返すんだよ」

「……え?」

「……それは、持っとけよ」

「……は?」




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