呪い殺して -ウォーターカラーズ 番外編-
きつい役や敵役も多かったから、イヤな人と思われることも多々あった。
演じる側としては、そういった役の方が面白味があるのだけど。
役者冥利に尽きるともいえるけど、そのままのわたしを理解してくれて、普通に接されると、やっぱり嬉しかった。
「薫くん、お元気ですか?」
「ああ、薫ねぇ……」
わたしの問いに、お母さまは困ったように眉を寄せた。
「相変わらず何をやってるのかよくわからないけど、こもって絵ばっかり描いてるんじゃないかしらね。
大学にも行かずにプラプラして。
こっちが何を言ってもどうせ聞かないし、放ったらかしてるから」
想像通りのいらえに、思わず頬が緩んだ。
「薫くんらしいですね」
一度会っただけだけど、テレビもほとんど見ないのか、わたしの名前を聞いても知らなかった薫くん。
顔を見てもピンと来なかったみたいで、宝塚出身の女優だと言われても、口をポカンと開けて、「ああ」の一言だけで、反応に困ったのかポリポリ頭をかいていた。