呪い殺して -ウォーターカラーズ 番外編-


(面白い人)


兄弟でも、智弘さんとは全然違うのね。


「学生さん?」

「いえ、あの……自称絵描きのただのフリーターですよ」


にっこり微笑む、その笑顔で周りがぱぁっと明るくなるような気がした。


そんな彼が描いた絵を見せてもらって、驚いた。

これが薄っぺらい紙なのかと疑いたくなるくらい、紙以上の広がりのある世界。

子どもの頃に夢見ていた美しい想像の世界がそのまま絵になったような、そんな絵だった。

それは、見ているとこの世界に入り込んでしまったんじゃないかと錯覚してしまうくらいの迫力。


(こんなのを描いていたら、そりゃテレビなんて見ているヒマないかもね)

テレビなんかよりよっぽど楽しいだろうから。


「すごい。すてき」


息を呑むわたしに、壁に長身をもたせかけて見ていた薫くんは嬉しそうに微笑む。


「ねぇ、薫くん。

これ、写真に撮らせてもらっていい?」




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