呪い殺して -ウォーターカラーズ 番外編-


智弘さんの黒い瞳が空中をさまよった。


「あいつ、いつもプラプラしていい加減で考えなしで、それなのに周りが何かと世話を焼いちゃうから、適当にうまく行っちゃうからね。

何だろうな、ああ見えて要領がいいというかね」

「……それも実力のうちよ。

薫くんって、愛嬌があるでしょ? 素直で、裏がないというか。

何だか助けてあげたくなっちゃうもの」

「……」

「それだけ、知らないうちに薫くんが周りを助けてるんだと思うよ、きっと。

だからこそ、いざというときに誰かが助けてくれる。

ある種の人徳ね、あれは」

「……ずいぶん薫の肩を持つね」

「別に肩を持っているわけじゃないって。

智弘さんとはまた違うタイプの人だから、薫くんは。

ああいう人も認めてあげて」

「……」


今ひとつ納得がいかなそうな智弘さんの横顔に、思わず微笑んだ。


真面目で優秀で、責任感の強いこの人にはなかなか理解できないのかもしれない。


(かわいい人)




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