呪い殺して -ウォーターカラーズ 番外編-


つと、智弘さんに近づいて、胸に指を滑らせた。


「……智弘さん、あのね、今度のドラマの役柄ね」

「うん」

「脚本を読んだんだけど、わたし、幽霊の役だった」


智弘さんは微笑んでわたしを見た。


「レイが幽霊になったら怖そうだね」

「そうでしょ。

ベストなキャスティングだなんて言われたの。

怖い幽霊になるからね! 楽しみにしておいてよ」


幽霊のフリをしておどけると、智弘さんは笑った。


「5回しか出ない役なんだけど、なかなか重要な役どころでね。

愛する相手を呪い殺す役だから、また近所の子どもに怖がられそう」


智弘さんは微笑んで、ただ黙って軽く頷く。


「だけど……

愛する人を呪い殺すなんて、本当の愛じゃないよね」

「……」


わたしのつぶやきに、智弘さんは少し考えた。




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