小さな芽


指先でつまんで見ていたセダムの芽をそっと降ろすと、あたしの顎に手を掛ける。

きらめく黒い瞳が、あたしの目をじっと覗き込む。


「……未怜はひねくれ者だね」

「……お兄ちゃんに言われたくない」


鷹耶に言われたくないよ、そんなこと。

誰よりもひねくれてるくせに。



ほんのり笑みを浮かべた形のよい唇が近づく。


「ちょっと、お兄ちゃん、こんなところでやめ……」


抗議する唇を塞がれた。

体を回った腕が、今にも倒れそうな背中を支える。


「……ちょっと、外から見えるってば」

「見えないよ」


鷹耶の頬には、からかうような笑み。


「……こんなところでなんて、やめてよ」

「じゃあ、家の中ならいいの?」

「……」

「そんなら……」

「きゃっ、ちょっと、降ろして」


いきなりがばっと抱き上げられて、思わずじたばたともがく。



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