小さな芽





1ヶ月もすると、植木鉢の中の小さな芽は無事土に根付いたみたいで。

いろいろな形の小さな葉っぱがさまざまな彩りを見せて、鉢からこぼれそうなくらい盛り上がってた。


赤い葉、白い筋の入った葉。細長い葉。丸い葉。模様入りの葉。

ありとあらゆる種類の葉っぱが入り乱れて。

それは、想像していたのとは全く違って、まるで絵画のように美しかった。


(ほんとにあんなのが育つんだ)


ゴミみたいだったあの小さな芽の思わぬ生命力に、あたしは驚いてた。





リビングに降りると、ウッドデッキにちらっと人影が見えた。


(――誰?)


まさか、泥棒とか?


ドキッとして、つい怖い想像をしつつ、レースのカーテン越しにそっと覗くと。

植木鉢を覗き込んでいる人影が見えた。


白いカッターシャツ。

黒髪が穏やかな風にさらさらと揺れてる。


(……なんだ)



鷹耶。



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