小さな芽


どうやらあたしには気付いてないみたい。

鷹耶はしゃがみこんでヒザに頬杖ついて、こんもり茂ったセダムの葉っぱを指先でツンツンとつついてた。


(――ん?)


目を細めて、口元がちょっぴりほころんでる。

どこか照れたような、はにかむような笑顔。



(何だろ。

あんな顔しちゃって)



――もしかして、時々見てたのかな。





紅茶を淹れていたら、窓が開く音がした。

肩越しに振り向くと、窓からリビングに入った鷹耶が、興味なさげにあたしにちらっと視線を投げるのが見えた。


(澄ました顔しちゃって)


何だかおかしくなって、ついつい笑ってしまう。


「何笑ってんの?」

「……何でもない」

「んじゃ、言えよ」

「何でもないってば……」


背後から肩を抱く鷹耶の腕。

温かい体温。

頬がうなじにすり寄せられ、唇が這う。



この小説の表紙へ
HOME