「ああ、あの……
部活のときって、髪をひとつにまとめてたから……」
今は降ろしているし、それが新鮮なのかも。
「……」
どこかあわてたようなあたしの言葉に、センパイはニヤっとしただけで、何も言わなかった。
「そうだ。今日のゲーム、本当はカップル参加なんだよな。
だからオレら、カップルってことにしとけよ」
「え? ……あ、はい」
(カップル……)
「カップルのふり」なんて、どうすればいいのかな。
とまどうあたしをよそに。
都倉センパイの手がさっとあたしの肩に伸びた。
「どうせならカップルらしくしようぜ」
(きゃっ……)
ドクン、ドクン。
あたしの心臓が急に存在を主張しはじめる。
(何ドキドキしてるんだろ)
あたしのこういう反応を見て、センパイは楽しんでいるに違いない。
こっそり呼吸を整えて、心を落ち着かせる。
この人にとっては単なるお遊び。
いちいち反応するだけ無駄だもん。
見上げると、センパイの整った横顔があった。
青空をバックに、さらさらの髪が風になびいている。
(たとえ“フリ”でも、この人に肩を抱かれて歩いてるなんて……)
うそみたい。