顔を近づけて耳元でつぶやく。
「そだ、今はオレの女なんだから、先輩って呼び方やめろよ、
凌って呼べ。バレんだろ」
「あ、すみません」
「ったく、固てーな」
そう言ってくっくっと含み笑いをする。
「彼氏にすみません、なんか言うか?」
……そんなこと言われても。
あたしはドギマギして、あわてて話題を変えた。
「あの……彼女いないって、ホントなんですか?」
「……ああ」
涼しい顔で小さくうなずくと、ニヤリと笑ってあたしの顔を覗き込む。
「そんなこと聞いて、どーすんの?」
「……いえ、あの、べべ別にどうも……」
あわてるあたしを面白そうに眺めて。
「今はいるけどな、毬香が」
「……」
ああ、今カップルってことになってるんだ。
どぎまぎしてつい下を向く。
(あ……もしかして、はぐらかされたのかな?)
でもそんなこと聞いて何になる?
関係ないのに。