凌はニヤニヤして、片方の腕をあたしの腰に回した。
もう片方の手はうなじに添えられて。
整った顔が近づいてくる。
うそでしょ……
「んじゃ、もらっちゃおうかな」
「ちょっと待って、ダメ、セ、セ……」
最後まで言わないうちに。
柔らかい唇で言葉をふさがれた。
「ふがが」
声にならない声。
(……ちょっと……)
目なんてもちろん開けたまま。
初めてこんな間近に見る凌の顔。
(睫毛ながーい)
あたしは思わず場違いなことを考えた。
抱きしめられて、触れる服越しにほんのり体温が伝わって。
何だかちょっと……
(てか、あたし、ファーストキス!)
なんて状況のファーストキスなんだろ。
何だか笑いたくなる。