「……」
あたしは目を合わせられずに、顔をそむけてた。
さっきこの人と何をしたのか、思い出すのも恥ずかしい……。
どんな顔すればいいわけ?
「なに? 怒ってんの?」
からかうような声。
――怒ってる?
怒ってるよ。のこのこ自分からこんなところに来ちゃったあたしに。
「ちょっと来いよ」
「きゃっ」
腕を強引に引っ張られて。
すぐ先の教室に入っていった。
狭い部屋。
高校の部屋の半分程度しかない。
「いいから座れよ」
扉を丁寧に閉め、奥の椅子に腰掛けた凌は、あたしを正面に座らせた。
「いきなり何だよ。
さすが陸上部だな、足だけは速いな、おまえ。
でもさぁ……せめて一声掛けてから行けば?」
口の端に皮肉な笑みを残してそう言う。
あたしは何も答えなかった。
だって……。