(何も言うことなんてないもの)
早く帰りたい。それだけ。
長い沈黙が落ちる。
沈黙に耐えられなくなったのは、意外にも凌だった。
凌は、下を向いてるあたしの顎をつかんだ。
自分の方にあたしの顔をぐいっと向ける。
あたしは凌の目をじっとにらんだ。
「最初から……
彼女じゃない子を連れてくる担当だったんですね……」
「何だ、そのことか」
凌は笑った。
「かわいい子連れてこいって言われたからな」
そんなこと言われても、うれしくなんかないから。
「彼女いないからゲーム付き合ってって言ってたのに……」
だから何とか耐えてたのに。
最初からだまされてたなんて、ヒドい。
しかも、みんな“彼女じゃない”って知ってたなんて。
どんな気分で、あたしを見てたの?
想像したくもない。
「……んだよ。哀れんでくれたってわけか?」
凌はニヤッと皮肉げに笑うと、言い放った。