「そう。オレちゃんと女いるから。
今日は恋人役サンキュ。んじゃな。帰れよ」
(あ………)
ガツンと頭を殴られたような気分。
そうじゃないかって思ってはいたけど。
改めて言葉にされると、そのショックは想像以上で、あたしは一瞬ふらついた。
決定打を浴びて、あたしはのろのろと椅子から立ち上がる。
ひどい。
ひどいよ。
こんな人の言うことをどうして聞いたんだろ。
来るんじゃなかった。
ほんとに。
ばかなあたし。
チクリ。
――胸が痛いのはなぜ?
まだあたしの腕をつかんでいた凌の手をゆっくりと、しかし確実にはがすと。
あたしはくるっと凌に背を向けてとぼとぼと歩き出した。