家に帰ろう。
凌に背を向けた途端に、どういうわけかじわっと涙腺がゆるむのを、あたしは何とかこらえた。
「なぁ。
――そういうシナリオがいいのか?」
まさにドアに手をかけようという瞬間。
不意に、後ろから凌に声を掛けられて、あたしは背を向けたまま立ち止まった。
奇妙なまでの、静かな声。
(……シナリオ?)
「ったく、おまえはどこまでも素直すぎるな。
ちったぁ怒るとか、すれば?」
あたしは振り返らず、立ち止まったままだった。
この人が、何が言いたいのかわからない。
「もう1つ別のパターンがあるんだけどな」
……パターン?