ガチャ。
勢いよく部室のドアを開けて飛び出して。
あたしは、ちょうど入ってこようとしてた人と正面衝突した。
「わっ」
「きゃあっ」
踏みとどまれずに、ぐらっとよろける。
「おっと」
地面に倒れかけたあたしは、ふわりとしなやかな腕に抱きとめられた。
「きゃっ」
「はいはい、ちゃんと前見ないと車が通るよ」
「あ……!」
ちょっぴりおどけた声。
その声は――
「蓮センパイ!」
驚いて見上げた上には、蓮(れん)センパイのくしゃっとした明るい笑顔があった。
日に焼けた精悍な顔つきと、笑った口元からのぞく健康的な白い歯。
この人は、保坂蓮センパイ。
元男子テニス部のキャプテン。
今年の5月に部を引退した3年生。
プレー中の、精神集中した、険しい鋭い目つきと、普段のくしゃっとした笑顔のギャップがとっても魅力的。
あたしはこっそり、蓮センパイのプレーによく見とれてた。